2020年7月27日
産後のお母さんのケア、東洋医学の視点から考えてみました
昨日、「北海道のお産と子育てをもっと楽しく豊かに」北海道マザーリングサポート協会の支援者学習会に参加させてもらいました。
「授乳支援の基本とアセスメントのための基礎知識」というテーマでのお話だったのですが、乳児期の親子を診る機会があるので勉強になるとともに、助産師さんの赤ちゃんやお母さんのケアへの真剣さがビシビシ伝わりました。助産師さんって、産後のお母さんのお母さんみたいなものでもあるのかも?って思ったくらいです。
その中で、
「産後に養生していないと産後4か月くらいに髪の毛が大量に抜ける」
「(産後ママが)食欲がなく、おはぎばかり食べている人がいる」というリアルなお話をたくさんお聞きしました。
心当たりある産後のお母さん、おられますか?
そのような場合、東洋医学的には、どのような産後ケアを考えたらいいのか?と一つのお題として、考えてみました。
東洋医学では、世の中のものは五行といって五つの基本的要素に分類して考えます。身体の中も五臓(肝・心・脾・肺・腎)で分類し、どの五臓が弱っているか(虚といいます)、診断法をつかって見極め治療していきます。
その見極め方の一つとして、「五行色体表」を使います。人が何を好んで食べるか、ということからも、どの臓が弱っているかをみることができます。
五臓が変調を招いた時に食べたくなるもの(五味)
五行 |
肝 |
心 |
脾 |
肺 |
腎 |
五味 |
酸 |
苦 |
甘 |
辛 |
鹹(塩味) |
そして、五臓が変調した時に五臓を補う食べ物もあります
五行 |
肝 |
心 |
脾 |
肺 |
腎 |
五果 |
李(すもも) |
杏 |
棗(なつめ) |
桃 |
栗 |
五菜 |
韮(にら) |
薤(らっきょう) |
葵 |
葱(ねぎ) |
豆の葉 |
五穀 |
麦 |
黍 |
粟 |
稲 |
豆 |
五畜 |
鶏 |
羊 |
牛 |
馬 |
豚 |
妊娠の時に酸っぱいものを食べたくなるのは、それで肝を養生しているからです。妊娠するには肝の気が充実していることが大事です。
産後に食欲でなくて「おはぎしか食べない」、というお母さん、五味では甘いものを好んでいるのか?とも見ることができ、その場合五臓の中でも脾が弱っている(脾虚)、と見ることができます。
ただ、おはぎの素材としては小豆と米になるので、腎と肺の変調がありそれを補うために豆(小豆)と稲(米)を取っているのかもしれません。もしかしたらそのお母さんは無意識に腎と肺を補いたくて(腎虚)、おはぎしか食べない、となっていたのかもしれないですね。脾腎両虚といって、どちらも弱っているともみえるかもしれないです。
また、五臓の状態が現れる身体の部位として、五華という分類で見ることもあります。
五行 |
肝 |
心 |
脾 |
肺 |
腎 |
五華 |
爪 |
面色 |
唇 |
毛 |
髪 |
「養生していないと産後4か月で髪の毛が抜ける」というのも、ホルモン等の関係があるようなのですが、東洋医学的には髪=腎の状態を表す指標となります。髪の毛が抜ける、ということは、腎が弱っているということが考えられます。
腎というのは、生殖をつかさどりますので、お産を終えたお母さんの腎が弱っているというのはその通りとも言えますね。
上記の例では、東洋医学的には腎虚になる可能性があるので、腎気を補うツボを選べばいい、ということになりそうです。(臨床の場では、脈診・腹診・問診その他で総合的に判断しています)
個別の情報が少ない中での判断になりますが、産後というくくりで言っても腎虚は十分考えられるので、復溜にお灸をしたら身体が楽になって、おはぎ以外にももっといろいろな栄養が取れたり、消化吸収がよくなったりする、かも、しれません。
復溜:足の内果の上方2寸、アキレス腱の前縁
あん鍼灸院にも産後のママさんが治療にこられますけれど、助産師さんのお話で、産後に身体がつらくても我慢しているママが本当にたくさんいる、と感じました。
食欲なくて特定のものばかり食べたくなった時は、体に変調がある、補わないといけないものがある、と気づいていただきたいです。そして、髪の毛が抜けたら、腎虚かもですよ。弱っているところ、補ってくださいね。
産後のお母さんが我慢せずに、気楽にケアできる環境づくり、まだまだ工夫がいるのですね。